本物のWebアクセシビリティー・セミナー に参加
C&R社の 「本物のWebアクセシビリティー・セミナー~知ってる・やってるつもりになっていませんか?」に参加した。
前半は、お二人の特別講演があった。
- インフォアクシアの植木さんによる「Flashのアクセシビリティのベストプラクティスとユーザテスト」(ちょっと正式タイトル忘れてしまいました・・・)
- 東京女子大学 渡辺隆行さんの「Webアクセシビリティ概論」
また、後半には、ハーモニーアイさんの発表があった。
- NPO法人ハーモニー・アイさんの「各政党サイトのユーザテスト結果発表と評価」
- 視覚障害者の方による、パネルディスカッション
前半の植木さんと渡辺さんの内容は、まさに、マイコミからでている「Webアクセシビリティ」を読み直すべきと思う内容だった。植木さんの内容は「Flashではどうすべき」ではなく、もっと広いテーマで話を聞けた。「Flashではどうすべき」だけなら、私もロクナナワークショップでしている「Flashアクセシビリティスキルアップ講座」で十分だが、それよりも、もっと、一般的に訴え理解しやすい内容で、説得力があった。また、ユーザテストの重要性がよくわかるものだった。
基本的に、アクセシビリティを推進している方は、その思想がすばらしいと思う。アックゼロヨンの審査をさせていただいて思うのは、日本企業のサイトでは、そこに注目がいっていない。正直いって、がっかりなのだけど、すばらしい技術をもった方々が世界で動いているのに、日本国内と海外との意識のずれはなんなんだろう?と思う。その意識のズレとは、企業の障害者への対応の仕方だ。
これは、「Webアクセシビリティ」を読んでいても、そう思う。企業の意識がそこまで行っていないのか・・・。これは、もう4年まえからずっと言っているけど、残念ながら、ほとんど変わらない。
渡辺さんが常々言っておられるのだが、Webアクセシビリティを円滑に実現するためには、3者の協力が必須だ。
ブラウザやスクリーンリーダー、オーサリングツールを作るメーカー、それに則ってWebコンテンツを作る制作者、そして、そのコンテンツを積極的に利用しようというユーザ(この場合は障害者など)なのだが、Webがアクセシブルでないといわれると、すべての責任をWebデザイナーが感じてしまうのは、なぜだろうか。みんなで、良くしていく必要があるWebアクセシビリティだ。
また、後半のハーモニーアイさんの発表では、現状のサイトの酷さが、分かってはいたが、数値になると、さらに具体的にわかった、という感じだった。取り上げたのは、日本の政党のサイトだ。
正直な話、政党のサイトどころか政治にも、期待はしていないが、上場企業のサイトであっても、期待できるところはほとんどないのが悲しい現実なのだ。
ちなみに、社民党はヤシロミントウと読み上げ、共産党の委員長は、志位(しい)さんではなく、ココロザシイさんだ。
まったく悲しすぎる結果。障害者も選挙権を持っていることを知らないのだろうか?
最悪なのは、自民党で、わざわざ、「このホームページは、読み上げソフトに対応云々・・・」と書いてあるのに、グローバルナビゲーションの画像にaltがついていない・・・やる気あるのかどうか・・・
だが、こういうホームページは、少なくない。たとえば、フジテレビのホームページ。
視覚障害者の娯楽といえば、テレビなのだが(ここで、?と思った人は、間違った先入観を持ちすぎているので注意)、フジテレビのサイトは、Flashのメニューが何も情報を伝えないから、まったくわからない。番組のことを知りたくてもオフィシャルな情報にたどり着けるかどうかさえわからないのだ。
民間がもっと積極的にしたくなるような何かがないといけないのかもしれない。とはいえ、エコとか反捕鯨みたいに、保護が目的なのか、政治的圧力と金儲けが目的なのかわからなくなるのも悲しいことなのだけれども。何らかのムーブメントがあっても良いはずなのに。
そして、最後のパネルディスカッションでは、住んでいるところも、職業も、年齢も、PCリテラシーもまちまちの方々による、こういうサイトはどうなのですか?という疑問に対するパネルディスカッションがSkypeを使って行われた。
ネットは好きだけど、自分にはソフトをあやつるテニックはないから、機能を駆使してません~という人がいたり、機能をバリバリに使って見出し(h1タグとか)を拾い読みしていたりと、人それぞれの使い方があって面白いと思った。この辺は晴眼者も同じかもしれない。
この中で、京都にお住まいの方が言っていた言葉がアクセシビリティの本質を突いていたと思った「技術的な正解かどうかがわからずとも、こういうコンテンツが使いやすいだろうか、ということを常に考えていけば、アクセシビリティへの回答ができてくるはずなのです」(つまり、想像力を制作側がもっと働かせればおのずと正解も見えてくるはずで、皆まで言わないといけないのだろうか?と)。
まったくその通りだと思う。今の制作者に欠けているのは、思いやり、想像力というクリエイティビティなのだ。
最後に付け加えると「googleアドセンス」とかの広告は、確実にスクリーンリーダーにとって邪魔である。
自分のブログに小遣い稼ぎに付けるのは、どうかといつも思ってたが(何か間違っている)、確かにスクリーンリーダーで読むと、無駄なテキストが増えて、最悪だ。場所にもよるが、本文とかの間に挟んでいる人は、アクセシビリティ的に最悪ということで、次からはセミナーでも取り上げていこうかと、思うほどだった。
最後に、私がオススメする3冊を紹介しておく。
Webアクセシビリティ大全ともいえる、思想を学び技術を工夫し、アクセシビリティへの挑戦をしたくなる本。
Webアクセシビリティ ~標準準拠でアクセシブルなサイトを構築/管理するための考え方と実践~ (Web Designing BOOKS)
渡辺 隆行 梅垣 正宏 植木 真
そして、もっとやわらかく、アクセシビリティではなく、盲目の人の日常生活から何かを感じるための本。正解を見せるわけではない。
朝子さんの一日―目の不自由な人の生活を知る絵本
永原 達也
最後に、点字に興味を持ったら、点字入門キットつきの俳句・短歌集。目が見えないがゆえに見える世界があることがよくわかる俳句・短歌が楽しめ、さらに、点字も学べる。私は、名刺や季節の挨拶状に点字を打っている。そして、日常にあふれる点字を読みながら、なんと不親切な解説(点字)なんだと憤ることが多くなった・・・企業はそれで対応しているつもりなのだ。もちろん、ないよりはマシという程度だが。
まなざし―盲目の俳句・短歌集
大森 理恵 辺見 じゅん
2008年8月12日 追記
ミキ・オキタさんが、C|net Japanの読者ブログにて、「FLASHのアクセシビリティ/Webアクセシビリティ概論 - アクセシビリティセミナーレポート」を3回に分けて掲載予定だそうだ。
非常によくまとまっているので、ざっと読むだけでもためになるはずだ。
また、追記に伴って、本文の誤字脱字を見直し、文章も手直しした。
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- Webアクセシビリティセミナー終了。ありがとうございました!! from ユーザーの生の声を届ける!ハーモニーblog 2008-07-22 (火) 17:19
- 7月18日に開催いたしました「本物のアクセシビリティセミナー」 は、盛況にて無事終了いたしました。 参加いただいた皆様、ありがとうございました。 Sk... 続きを読む
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