『100万人から教わったウェブサービスの極意 -「モバツイ」開発1268日の知恵と視点』読後感想
100万人から教わったウェブサービスの極意 ~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点 (藤川真一)
モバツイとは
「モバツイ」とは、ツイッターを主に日本のケータイ(いわゆるガラケー)で楽しむためのWEBサービスだ。今では、モバツイはスマートフォン用のアプリや、普通にデスクトップPCのブラウザでも楽しめる。
このモバツイを開発したのは、著者の藤川さん(えふしんさん)だ。当然、モバツイをもっともよく知る人物だろう。
本書は読み物
本書は技術書ではないので、モバツイが利用しているAmazonEC2についてや、モバツイの技術的なことは書いてない。むしろサービス向上のためにAmazonEC2を利用する状況に追いやられた時の心境とかが書かれている。
主に、モバツイ、ツイッター、WEBサービスについて書かれている。が個人的には人生設計について学んだ(遅いんだけどw)
なので、WEBサービスに興味がなくても、ツイッターがなぜメジャーに成長したかのえふしんさんなりの分析が書かれているので、そこだけでも十分面白い(勉強になる)。
大切なのは努力が前提の運
本書は「モバツイ」というWEBサービスを作ったえふしんさんが、これからWEBサービスを作りたいと思っている人に「覚悟」を迫り、実際に作って、これから先の見えない運用をしなくてはいけない人には「エール」を贈っている本なのだ。
そして、モバツイ開発のきっかけや、えふしんさんの人生設計、ツイッターの分析などには、読む人の状況によって様々な「気づき」がある。
私がおろどいたのは、2つ。
1つ目は、えふしんさんが今日のモバツイがあるのは「強運のおかげ」と念を押していうところだ。
確かに「うまくいかなくて当たり前」と言っているくらいにサービスは作ったからと言って話題になるとは限らないし、ましてや事業として大きく育つなんてほとんどないだろう。その状況を鑑みて「運」を強調しているようにも見えたが、私からは運も実力のウチ、運を呼び寄せるのも力だと言っておく。
そして、運命の女神には前髪しかないのだから、それをつかむ為には、コツコツと入念な準備が必要なのだ。しかし、その入念な準備は自分の気持ち次第でいつでも止めることができるという悪魔の誘いがあるのだから、数年間(モバツイが2007年からだとすると、モバツイが事業の中核になるまでの3年間)誘惑に勝ち続けるためには、相当の努力が必要だ。ここで私は「好きこそものの上手なれ」という言葉が思い浮かぶ。
どっちも私にはないが「あきらめない心」と「自分のWEBサービスが大好き」という気持ちが何より大切だと言える。
2つ目は、独立する時期を自分で決めていたにも関わらず、モバツイで事業を起こすことも、それ関連の事業にすることも考えていなかったことだ。つまり、ほとんどノープランで会社員を辞めてしまったのが、なんという無茶と思った。えふしんさんはツイッターの分析を見ても、思慮深いところがたくさんあって人生設計もしているのかと思いきや、時々実行する無茶が凄い。モバツイが事業になるかどうかの目処もなく、半年前にとりあえず辞めると宣言するのは、計画的なのか無茶なのか……
そういえば、本の最後で次のように言っている。
「あなたが大企業の資本を活用した後発型のビジネスをしていくのでないなら、はたから見れば少なからず無茶ととられるような想いを持って、人より一歩抜け出すための努力と賭けが必要です」(本文より引用)
入念な準備のためのコツコツとした性格と、時々実行する大胆な無茶があるからモバツイが大きくなったのかもしれない。
そして、この本を通して驚いたのは、えふしんさんは、とても真面目でかなり具体的かつ計画的な人生設計をしているということ。にも関わらず、モバツイに関しては、先が見えていなかったこと。どちらかというと、好きだからという思考回路が優先されていたようだ。そのため、ユーザー数の増加やAmazonEC2の利用などは、計画的というよりは状況に追い込まれてそうなったようだ。このちぐはぐさが面白い。
モバツイ利用者やえふしんさんの知り合い、同じくWEBサービスに身を投じている人が読めばえふしんさんを身近に感じること間違い無しの本だ。
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