もう一度、病気のことを話してみる
はじめに
先日、久しぶりといっていい顔ぶれで食事をしました。
たぶん、知り合ったのが20代の最後らへんだから、1520年くらいのお付き合い。
この20年で変わったことで上げるなら、結婚したとか、子供ができたとか会社を作ったとか、人によってそれぞれです。
私の場合は、結婚、会社設立と同じくらい病気がウェイトを占めているのが事実で、さらに、この1年くらいは、生活の半分以上が病気関連です。
そこで、こんどはより具体的に病気と私についてまとめてみようかな、と思いました。気になる方だけ読んでいただければと思います。
では。
病名は脊髄小脳変性症
まず、病名から。
「脊髄小脳変性症」といいます。でも、これは「お腹が痛い」といかいうレベルの大きなくくり、もうすこし詳しく言うと「マチャド・ジョセフ病」といい、SCA3というコードを使うこともあります。
ググればすぐに出てくるので、具体的な内容はそちらに任せますが、一言でいうと「人間のバランスを司る小脳」がどんどん縮んでいきます。原因は解明されつつありますが、詳細は不明です。もちろん、原因がわからないので、症状を改善する対処療法は可能でも、根本治療はできません。
安心すべきは、以下の3点。
- 伝染性ではない(孤発性と遺伝性があります)
- 非常に珍しい(脊髄小脳変性症が日本で3万人くらいいるらしいので、1億5000万分の3万です)
- すぐに生命を脅かさない(最後まで進行するには通常、20年ほどの長い時間がかかります)
最後がどんな状態なのかは想像できません。私の母も同じ病気で、現在寝たきりですが、まだ、90%くらいしか進行していないと思えます。
ただ、言えることは、日常生活を自宅で送ることが可能なのが進行75%くらいだとしたら現在、相当進行しているだろうなというところです。
進行度合い
そこで、一番知ってほしい、現在の私の症状についてもっと詳しくお話しましょう。
一番大きいのは姿勢です。立ちっぱなしができません。当然、歩行にも影響があります。
歩行は、補助があればなんとかできますが、しゃがんだりは転倒の危険があります。段差があると転倒の危険を感じるので、フラットなところしか行けません。嘘みたいですが、電源コードとか毛布につまづきます。
また、基本階段は利用できないので、エレベーターかエスカレーターが必須です。階段は、手すりがあって、誰かにつかまりながらであれば、移動できなくもないですが、かなり疲れます。
公共交通機関の電車・バスは、補助があればかろうじて利用できます。一人では無理です。
例えば、今住んでいるマンションは駅の近くで3分なのですが、私が行くと(補助ありで)10分くらいかかります。
近くに大きな病院があるため、昔は徒歩で通えることが便利でしたが、今は、かなり不便です。なぜなら、歩くには20、30分かかるし、タクシーで行くには近すぎて、数百メートルに1メーター払えるほどリッチじゃないですしw・・・タクシー乗り場まで行ったら、半分の距離を移動したことになるんです。
また、外出できるのは、天気が良い、暖かい、妻が補助してくれる、という3つの条件が揃った時だけです。
基本的に夜の外出は、冷えるし、転倒の危険が伴うため避けています。
転倒を避けるのには理由があります。痛いからだけじゃなくて、誰もが持っている反射として、転倒するときは手が先にでますが、私の病気では手が出ません。すると、ダイレクトに倒れることになり、顔面や頭を打ちます。体重60Kgの大人が倒れたら、自分へのダメージも大きいし、その転倒先にあるものが壊れたりすることはわかりきっています。なので、この病気では、転倒がもっとも恐れることになります。幸い、まだ、大きなケガは肋骨の骨折や打撲程度ですが、それでもかなり痛いです。
今のところ、転倒するときは、その下に猫がいないことと、ガラスやプラスチックなど割れるものがないことを祈っています。
また、一番困るのは、モノが2重に見えるため、部屋の入口などで肩がドアなどにぶつかることです。時々、顔もぶつけそうになります。
体重は痩せたと言っても60Kgもあり、その物体がヨボヨボと歩いて壁にぶつかり、衝撃を吸収できる受け身が取れないと、大怪我をします。
そのため、小さな傷は日常茶飯事だったり、打ち身も多いです。
また、人間は、日常、よく腰を起点に捻っています。モノを左から右へ運ぶときでさえ、捻りますし、歩くときも、体をすこし捻って足を運んでいます。
私は、全身の筋力が衰えてきて捻りの動作ができません。といっても、頭では捻りの動作を憶えていて、無意識に動いてしまうと捻りの動作に入るのですが、捻りを制御する筋力がないので、そのまま体が回転してしまって転倒したりぶつかったりします。
一番苦労するのが、昔できていたことも「今はできないんだ」と頭で理解し動作を起こさないように注意することです。しかし、コレができずに、自分の体に振り回されていろんな所にぶつかってます。
食べ物を食べると、むせ込んだりするのも、実は病気の影響です。小脳は脊髄反射を司るので、反射で動いている人間の挙動部分が徐々に動かなくなるのが特徴です。また、自律神経が弱って、寒がったり、暑がったりもその影響です。
筋力も弱まって来ました。どれくらいかというと、四つん這いになって前にすすむときに、腕の筋力が落ちているので、姿勢が保持できず顔から落ちちゃうかんじです。一度、実際に顔から落ちたこともありましたが、ラッキーなことにその先にクッションがあったので、顔面がクッションにめり込んで首はかなり痛かったですが、メガネが壊れただけですみました。
でも、ラッキーかも知れない
と、まあ、いろいろ不便なことがあります。一見、不幸そうですけど、乙武さんの著書「五体不満足」で「不便だとおもったことはあるけど、不幸だと思ったことはない」と同じ心境です。強がりではなく、心からそう思えるんです。
また、ラッキーなことに私の病気では、難病指定されているために「介護保険」が利用できます。まだ、41才なのに、例外的に早期に利用できるため、かなりの福祉用具をレンタルできたり、障害者手帳でいろんな優遇をうけられるので、なんとか生活しています。
本当の今(2012年4月とかの様子)
この文章の原文を書いたのは2月ごろで、今は、4月頭。実は、3月末から電動車いすと電動リフト付きワーキングチェアを使っています。
正直なところ、これらを導入する前は外出が自分の力でできないのはかなりのストレスだったのだと思います。なにせ、駅前のポストにハガキ一枚出しにいけないのですから。でも、これらを導入することで、大きく活動範囲が広がりました。また、以前のように動けます。
そりゃぁ、動く速度は以前に比べたら、20倍くらい遅くなったでしょう。20代の自慢は早歩きで、虎ノ門から新橋を5分で歩いていましたから。
でも、今は、時間がかかることは気になりません。不思議ですが、一度、おそろしく時間がかかりながらも上手くいかないという体験をすると、時間がかかっても上手くいくならそれで十分と思えるようになりました。
なので、時間は盛大にかかりますが、なんとか全部自分でできます。椅子に座っている限りはほとんど普通でわかりません。また、一年で大きく変わるかもしれませんが、今は、ものすごく気力に満ちています。
それで・・・
だから、どうしろというつもりは全くありません。でも、たとえば私がイベントに参加できないのは、雨が降っているときや、体の調子がわるいとき、なので、あぁ~そうなのね、と思って、あまり腹をたてないで欲しい、それだけです。(そんな目にあったわけではないですけど)
最後に、現在の写真を撮ってもらったので載せておきます。
追記:頭は正常です。思考能力も以前と変わらないのです。変わったのは、小脳の活動レベルだけなので、仕事はほそぼそと続けています。
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