予感

予感

父親の危篤という知らせを受けたのは、お昼過ぎ。
妹や弟に聞くと、交通事故で病院へ運び込まれ、緊急手術らしい。

いそいで、新幹線を予約し、新横浜から名古屋へ行く準備をする。
しかし、当日の天気は荒れていた。台風が上陸するという話だったからだ。

横浜市内は、どしゃぶり。新幹線のホームの天井が破れそうな勢いで雨がぶつかってくる。今まで聞いたこともない音だ。新幹線はこんな雨でもフルスピードで走るのか、と変に感心してしまう。

新幹線に乗り、しばらくすると、晴れ間が時々見える。どしゃぶりの雨が止んできた。台風の影響が風だけになってきたようだった。そのとき、ふと見た、空からの光を見て、父親が助かったのではないかと予感した。

正直なところ、横浜を出るときは、葬式のこととかいろいろと手順を考えたりしたし、家を出るときには、喪服も一式出して、妻がすぐに持って実家まで駆けつけることができるようにしておいた。

が、その心配をすべてかき消してくれたのが、この空模様だった。
私は、新幹線の中で遅い昼食をとり、名古屋まですこし眠ったのだった。

結局、病院へついたときには、手術は終わっており父親はICUに入っていた。もう、その日は面会はできなかったし、次の日も、会っても何をするでもなく、大きく腫れ上がった父親の腕を触り声をかけていた。目覚めることもない父親の腕をつねりながら、まずは、助かってよかったと思った。


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